テレビを見るときに使用する分波器という機器はご存じですか?聞いたことはあるけれど、実際に使用したことはないという方も多いかもしれない機器ですが、いったいどのようなときに使用すればよいのでしょうか。
実はアンテナからテレビまでに電波を送る際、電波を分ける機器として「分波器」「分配器」「分岐器」の3種類があります。機器によってそれぞれ役割が異なるため、用意した機器が目的にそぐわないものである…ということも十分にありうるのです。
今回はアンテナの「分波器」について徹底的にご紹介します。また、名前も見た目もそっくりな「分波器」「分配器」「分岐器」との役割の違いについても解説します。
このコラムを一読すると、購入間違いをしなくなるうえ、受信状況にあったものを選べるようになるでしょう。
分波器が必要になるのはどんなとき?
分波器はテレビを視聴しようとアンテナ線をつなげたとき、地デジだけ、BS/CSだけといったどちらか片方しか見ることができないトラブル時に使用します。
このトラブルは、地デジとCS/BSが1本のアンテナ線にまとまって送られていることが原因で起こります。電波がまじりあってしまっているのでテレビ側がうまく受信できず、強い信号のみを表示してしまいます。
そのため、片方がうまく映らずに視聴できない事態に陥るのです。
一般的に普及しているテレビの端子は、「VHS(地デジ)」と「BS/CS(衛星放送)」の2種類に分かれています。
戸建住宅ではアンテナが2つに分かれていることが多いので、配線されたケーブルも2本に分かれている場合が多いです。そのため、それぞれの接続端子に対応したケーブルを取り付けることで、正常にテレビが映ります。
一方で、アパートやマンションなどでは共用アンテナを使用している場合、複数の室内に電波を配線する都合上、信号が各部屋に1つのケーブルにまとまって届くことがあります。
「VHS(地デジ)」と「BS/CS(衛星放送)」の両方が1つのケーブルに混ざってしまっている状態なので、互いの信号が混ざってしまって、テレビや周辺機器側がうまく認識できなくなります。
その結果、テレビがどちらか片方のチャンネルしか映らなかったり、テレビそのものが映らなくなったりしてしまうのです。
分波器が必要かどうか確認したいのであれば、“ケーブルを「VHS(地デジ)」もしくは「BS/CS(衛星放送)」に差し替えてみる”とよいでしょう。この方法はただ端子を差し替えるだけなので手軽に行えます。
差し替えた際に一部のテレビが映るようになるのであれば、混合信号の可能性が高いです。
また、新しいテレビや、周辺機器のメーカー・機種によっては内部に分波器と同等の機能を持ったパーツが組み込まれていることもあり、ケーブルが1本でもうまく受信できることがあります。つまり、ケーブルが1本の場合でも必ず分波器を用意しなければいけない…ということではないのです。購入する前に本当にケーブルが必要なのか確認するとよいでしょう。
購入前に注意!「分波器」「分配器」「分岐器」の役割の違いとは?
「分波器」「分配器」「分岐器」と、アンテナからテレビまでの配線に取り付けられることが多い機器の名前は非常に似通っています。そのため、結局どれを取り付けたらいいのかわからなくなってしまう方も多いのではないでしょうか?
解決したい状況によって取り付けるものが異なります。それぞれの機器について簡単にまとめていきますので、テレビの使用環境や状況に合わせて適切なものを選んでいきましょう。
「分波器」 電波が混ざって地デジ、BS・CSがちゃんと映らないときはこれ!
分波器は、上記でもご紹介しましたが、アンテナから送られてきた電波を周波数ごとに分ける機能を持っています。そのため、設置することでうまく視聴できなかったテレビが映りやすくなります。
実は、分岐器も分波器と同じ役割をすることができるため、代わりとして使用することができます。しかし、分岐器は分波器に比べて電波を分けたときに信号レベルを落としてしまいやすく、受信ができなくなることも考えられます。受信レベルが落ちてしまうと、見ることができたチャンネルですら表示されなくなってしまうことが考えられるので、混合信号を分けたいのであれば「分岐器」を使用するようにしましょう。
「分配器」 自宅で複数台のテレビで視聴したいときに便利
分岐器はアンテナから届く信号を均等に分けて分配する役割を持ちます。仮に元の電波を10だとすると、分配器を通すことで5:5に分けることができるのです。そのため、各部屋でテレビを見たいときに分配器を使用することで、複数台のテレビで視聴することができるようになります。
分配器は届いた電波を均等に分けていくことができます。しかし、分配後の電波は分けられたため、元の電波よりも少なくなっていきます。電波が弱くなってしまうと信号レベルが低下してテレビ側が受信できなくなるので、複数台で視聴する場合は「ブースター」が必要になることもあります。
ブースターは、アンテナの受信レベルが弱い場合に有効なアイテムです。アンテナとテレビの間にDVDレコーダーなどを接続すると受信強度が弱くなりやすいので、電波が弱いと感じた際はブースターを接続するとよいでしょう。
「分岐器」 マンションやアパートなど広範囲で複数のテレビへ電波を送りたいとき
分岐器は分配器と似たような役割を担います。そのため、元の電波を分けていく機能がありますが、分け方に違いがあります。分岐器は分配器とは異なり、電波を均等に分けることはできません。その代わり電波の一部だけを分岐させることができます。
元の電波を分岐器に通した場合、10だったものを8:2や9:1といった具合に分けます。そのため、各フロアに電波を分岐したい場合に重宝します。
一般住宅では分配器で十分といえますが、部屋数の多いマンションやアパート、ビルなどでは分岐器が使用されています。
「分岐器」は、個人では必要になるケースが少ないため、購入を検討するのであれば「分波器」もしくは「分配器」がよいでしょう。
分波器を取り付けるなら【選び方】が重要
分波器といっても形状や性能が異なります。そのため、必要になって購入するときにどれがよいか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
分岐器の選ぶポイントは以下の点あります。購入する際はその2つに着目して選んでみると失敗がないかもしれません。
分波器はケーブル付属しているものとしていないものがある
分波器は、分波元のケーブルを接続する端子と、分波後の電波を流す2つの端子が計3つあります。このうち、分波後の端子部分に、ケーブルが付随しているものとしていないものがあります。
ケーブルが分波器につながっているので、端子からテレビ・周辺機器への信号が安定して送ることが可能です。分波器とケーブルが別になっているものだと接触不良が起きる可能性がありますが、つながっているタイプでは起こりません。
また、新たにケーブルを用意する必要もないうえ、見た目の統一感からすっきりとした印象になります。
一方で、ケーブルがついていないものは、ケーブルを用意しなければいけませんが、分波器自体は安価に入手できます。そのため、手元にケーブルがある場合は分離型を選ぶと費用の節約になるでしょう。
また、ケーブルが断線した場合に分波器ごと交換する必要がないので、安価に済ませることができるかもしれません。
4K・8K対応しているかどうか確認する
近年注目を浴びつつある4Kや8Kといったテレビに対応した分波器かどうか確認しましょう。現在4K・8Kテレビを使用している場合や、テレビの購入を検討している方は、対応した分波器を用意しなければうまく視聴できなくなる可能性があります。
高画素数のテレビは現在高価な部類であるため、まだ普及率は低いですが、今後のことを考えると、対応しているものを選ぶとよいかもしれません。
まとめ
テレビのチャンネルがうまく映らない場合、もしかすると電波が混ざってしまっているのかもしれません。もし信号ケーブルが1本で、テレビや周辺機器の「地デジ・BS/CS」の接続端子を差し替えてみた場合、一部のチャンネルが映るようであれば分波器の購入を検討してみましょう。
よく似た名前の「分岐器」「分配器」は、それぞれ役割が異なります。自分が今何を求めているのか今一度考えなおして、誤って違うものを購入してしまわないようにしましょう。
分波器はケーブルが付属しているものとしていないものがあります。また、4K・8K対応の分配器もありますので、購入時にどうすべきか、今後テレビを買い替える機会があるのか考えて選ぶようにしましょう。
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